>>>基本編<<<



*出し汁について

だし汁と言っても和食の中でもいろんな物があります。鰹と昆布、鰹出し、昆布出し、いりこ出し、鶏ガラ出し、と言う具合に用途によって様々ですが、とりあえずこの項では基本の基本である鰹と昆布のだし汁についてお話したいと思います。

鰹と昆布のだし汁の取り方
材料:水3リットル 鰹節75g  昆布10g

作り方
水に昆布を入れ煮立てる、この時沸騰するまでに最低でも10分以上時間をかけて煮ます。よく昆布に爪が立ったら昆布を上げると言いますが、このくらいの火加減でやるとほっておいても爪が立ちます。沸騰する寸前に昆布を鍋から取り出す。沸騰したら一度火を止め鰹節を入れ、再び火をつけひと煮立ちさせ、火を止める。そのまま5分ほど寝かせてから出しを漉します。家庭では出しを漉すときはザルなどにリードペーパータオル(ふわふわしたフェルトのような紙)をひいて漉すときれいに引けるでしょう。

はっきり言って出しのひき方は様々です。正しい方法というのも千差万別、人それぞれです。私がよく読んでいる料理雑誌に出しの特集があり、有名料亭などの出しの引き方が何通りも紹介されていましたが、それぞれバラバラどれを信じていいかわからなくなりました。その結果、自分の経験もふまえて自分の信じた納得いく方法で仕事をしようと思い現在に至っております。みなさんも形にとらわれず自由な発想で料理を楽しんでみて下さい。

応用編
出しのひき方を紹介しましたが、「そんなもんいちいちやってらんないよ」と言う方が多数を占めているかと思います。そこでちょっと手抜きしてみましょう。

*手抜き出し
材料:昆布 鰹風味のほんだし(よく売っている、粉末、液体何でも良いあんたのお好みのものを使って下さい。) 水 水から昆布を煮る、これは出しのひき方と方法は同じ、沸騰寸前で昆布を引き上げ火を止め、ほんだしを入れる(分量はほんだしの説明書を参考にして下さい) これで出来上がり。
さすがに、鰹節の出し比べると香りや風味は落ちるが、そこそこの味になるので家庭では結構使えると思います。
ここで注目して欲しいのは、昆布です、和食になくてはならないのがこの昆布。よく旨味と言う言葉を聞きますがこの旨味こそ昆布の味と思っていただいても過言ではありません。旨味の成分を科学的に表すと「グルタミン酸」と言う物質になります、これを化学的に作り市販しているのがみなさんよくご存じの「味の素」なのです。科学的に作っておいて「ちゃんとちゃんとの味の素」はないだろうと思っていしまいますが、実際のところ多くの人はこの味の素の味にならされてしまっており、味の素を使っていないと美味しいと思わなくなっている人も少なくありません。対抗している気はさらさらありませんが私は自分の料理には絶対味の素とほんだしは使わないようにしております。料理人の見栄かもしれませんが、せっかく日本人が長い歴史をかけて生み出した鰹節と昆布というすばらしい材料があるのにそれを使わないと言うのはちょっと気が引ける思いがいたします。ですからみなさんも是非家庭に昆布を用意してみて下さい、出し汁以外にも調味料感覚で煮物など(肉じゃが、豚汁など)にちょっと1枚入れるだけでグンと自然な旨味が出ると思います、スーパーに行けば5cmぐらいに切った使いやすいサイズの物もありますので是非常備品として用意することをオススメします。

*余った出しの保存法

出しが余ってしまった場合は冷凍しましょう。風味は落ちますが、ビニール袋に分量を決めて冷凍しておくと、次回面倒くさい作業をしなくても溶かすだけで出しを使うことが出来ますので大変便利です。




*調味料について

 和食の調味料も話し出すとたくさんあってきりがなくなります、また、醤油や味噌などそれぞれについても奥が深いのでまたの機会に余話としてお話しできればと考えております。ここではせめてこれだけは家庭の台所に用意して置いて欲しい物を述べたいと思います。

*用意しておいて欲しい調味料
薄口醤油

濃い口醤油

本みりん・・・みりん風調味料より少し値段が高くなりますがこちらをオススメします

日本酒・・・料理用ですので安い酒で充分です)

塩・・・単なる塩、食卓塩は旨味調味料が入っているので気をつけて

上白糖

味噌・・・いつもみそ汁に使っている物の他に八丁味噌と西京味噌も用意して置いて欲しい。
 八丁味噌 愛知県を中心とした代表的な豆味噌、味噌煮込みうどんや味噌カツでおなじみの赤味噌。
 西京味噌 京都で作られる代表的な米味噌。やんわりとした甘い風味を持った上品な味噌。

米酢・・・普通の穀物酢でもいいと思うが、米酢の方が酸味にとげとげしさがなくマイルドな味わいとなっているのでこちらをオススメいたします。

以上です。話を進めていく上で上記以外の調味料が出てくるかもしれませんが、その都度補足していきたいと思います。まあ、このぐらい揃えておくと大抵の和食は作れると思います。




*分量について

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、調味料などの分量の正確な数字を記しておきたいと思います。

小さじ1杯・・・5cc
大さじ1杯・・・15cc
カップ1杯・・・200cc
1合・・・180cc

分量の表記で「少々」などと非常に曖昧な表現を見ることが多いと思いますが、これは塩ですとひとつまみないしふたつまみ程度の量と思っていただいて結構です、液体ですと小さじ1/3〜1/2程度の量です。

せめて調理器具として大さじ、小さじ、計量カップ、1kgぐらい量れる計量器はご家庭に用意しておくと便利かと思われます。


「割」について

「割(わり)」と言われても何のことかわからない方がほとんどだと思いますが、割とはだし汁や醤油などの調味料のどのような割合で合わせていくかという事です。実はほとんどの職人の方は自分の割を持っておりそれを基本として味付けを行っております。ですからいちいち大さじ何杯とか砂糖何gとかいう作り方は余りません、極端に言うとお玉一本で味付けが行えると思っていただいても大丈夫です、出し10に対して醤油、みりんが各1と言う具合に味を組み立てて行くわけです。そして、基準が決まるとそれに対して塩、砂糖などを加え微調整を行い一つの料理として完成していくのです。とにかく自分にとっての基準を作ると言うことがまず必要となってきます、素材の水分や旨味、塩分等も加わるので自分の基準で調理したところで味見を行い、足りないと思う調味料を加えたり、味が濃いと思った場合は出しで薄めたりして調整して行くわけです。何となく雰囲気はつかんでいただけたでしょうか?
ではでは基本的な割を紹介していきたいとおもいます。

天だし(4:1:1)
出し4
濃い口醤油1
みりん1
おなじみ天ぷらを食べるときに使う付け出し、ざるそばの出しにも使う割ですのでそば出しと呼んでいる方もいらっしゃいます。天ざるという天ぷらとざるそばが合体した定食がありますがきっと付け出しが共有できるところから生まれたのでしょう。でも、最近では別々に付け出しが出てくることが多いようです。色濃くしっかりとした味付けにしたい煮物などに使います。そば出しに使う場合はさば節で出しを引き重量感を出します。

煮物だし(10:1:1)
出し 10
薄口醤油 1
みりん 1
野菜などを色薄く芯までしっかりと煮るときに使う割です。これに多少の甘味(砂糖)等を加えいろんな物を入れて煮るとおでんの出来上がりです。たいていの物はこの割で煮るとそこそこいい味の物が出来ると思います。そばだし同様、さば節を使うと重量感がでます。

吸い出し(100:1:1)
出し100
塩 1
酒 1
薄口醤油ごく少量
このまま使うとお吸い物になりますが用途は多く、これを基準に少し濃いめに味付けし蕗などを漬けて味を含ませたり、葛を引いてあんかけのあん等にも使ったりします。

魚だし(3:3:1:1:0.5)
水3
酒3
濃い口醤油1
みりん1
砂糖0.5
出しと書きましたがこれにはだし汁が入りません、調味料のみ合わせた物となりますのでなめてみるとけっこう濃い味付けというのがわかると思います。これは魚などをこっくり煮るときに重宝する割です。

具体的に説明すると、煮物出しの場合あなたの家庭にあるお玉で出しを10杯鍋に入れたとします。これに対して同じお玉で醤油、みりんを各1杯づつ入れて煮るといいわけです。
こうしてみてみると非常にシンプルと言うことがおわかりになると思います。みんな同じ味になるのではないと思われそうですがご心配なく、素材によって味はいろいろ、煮物出しで大根を煮たときと牛蒡を煮たときでは味は全く異なります。そこに料理のおもしろさが潜んでいるわけです。また、大根をあっさり食べたいときは煮物出しで、色濃くしっかりとした味で食べたいときは天出しで、もっとこってりと食べたいときはぶりのかま等と一緒に魚出しで煮てみましょう。割を覚えると一つの素材でいくつもの料理が生まれてくるわけです。試しに冷蔵庫を覗いて何でもいいからこの割で煮てみては如何でしょうか。


「合わせ酢」について

食事の流れの中で酢の物は、メインになるおかずにはあまりなりませんが、脇役として欠かせない存在です。ちょっとした酢の物があるとそれぞれのおかずの味のアクセントになり、酸味が食をすめてくれる働きもします。2杯酢と3杯酢の「割」を紹介します。

2杯酢・・・酢1:薄口醤油1
3杯酢・・・酢1:薄口醤油1:みりん1
両方とも一煮立ちさせて冷まして使います。

これは作り置きが出来るのでまとめて作って、コーヒー等の空き瓶に入れて保存するといいでしょう。酢が入っているのでペットボトルや金属の容器に保存すると腐食する可能性があるので瓶に入れて保存時ましょう。

使い方ですが、共に出汁で割って使います、2杯酢・3杯酢共に1に対して出汁1の割を標準と考え、和える材料により薄くしたり、濃くしたりして用いることとなります。板前さんの間では割酢と呼ばれることもあります。酢の物を食べると作り手の味の好みなんかも結構わかり、個性の出やすいお料理の一つとも言えます。



料理用語集

*ため水
ほうれん草、小松菜、青梗菜など菜っぱ類を洗う方法、ボールなどに水をためそこで材料を洗い、手ですくい取るように取り出す。材料は水に浮き、砂などの汚れは水に沈むので手軽に汚れを取ることが出来る。

*あたり鉢・あたり棒
いわゆるすり鉢、すりこぎ(すり棒)のこと、料理屋さんは商売をしている関係上縁起を担ぐ風潮があり、「する」と言う言葉は損をするようで縁起が悪いと言うことから、「する」を「あたる」と言う言葉に置き換えて使うようになった。そのため、すり鉢、すりこぎのことをあたり鉢・あたり棒と呼んでいる。

*油抜き
油揚げのような油分を多く含んだ材料は、あらかじめ熱湯をかけ油分を抜いた後、調理する事が多い。この方法を油抜きと呼んでいます。

*ひたひた
鍋などに煮汁を入れた時、材料が煮汁にぎりぎり浸かるぐらいの分量をこう呼んでいます。

*揚げ衣
揚げる素材につける一番外側の物を指す。パン粉をはじめ、春雨、真引き粉、アーモンドなど様々の物がある。揚げ衣をつける際に下処理として必ず、素材に小麦粉を良くまぶし余分な粉をはらい、全卵または卵白を少し水で薄めたものに素材を通す、以上の過程を経てから和え衣をまぶす。

*油の温度
油の温度の見方は、少量の小麦粉を水でペースト状に溶いた生地を用意し、これを箸などでポトポト油に落として見るとわかりやすい。
低温(150℃〜160℃):落とした生地が底まで沈んで浮き上がってくるのに時間がかかる
中温(170℃〜180℃)):落とした生地が途中までしか沈まず、すぐ浮き上がってくる

高温(180℃以上)
:生地を落としても沈まず油の表面で飛び散る


*大名おろし
三枚下ろしの一種、魚の頭の方から中骨の上に包丁の刃先を入れ、尾に向けて一気に片身をおろす方法。この方法だと、どうしても中骨にぜいたくに身が残りやすいことからこの名がついた。

*醤油洗い
醤油に素材をまんべんなく浸ける下処理法。水っぽくなく仕上がる、味をなじませ、生臭みを抑える効果もある。

*地
調味した液体。




以上で基本編が終わりです。今後基本的なことが増えるかもしれませんがその時は又このページに来てご覧になって下さい。